情報とは、情の報せなり

 
 

現代はさまざまな情報が行き交い、人々はその渦の中に生きている。
最近では「個人情報」といったものが重視され、迂闊に他人にプライバシーを公開しないよう
注意喚起がなされる一方で、SNS等の普及により、プライバシーの公開合戦のような様相を呈している。
人と繋がるには自分自身の情報開示が不可欠だが、その情報が悪徳ビジネスに利用されたりする怖れも
あることから、情報開示は慎重にならざるをえないのが今の世の中の実情だ。
 
情報とは、情の報せなり
 
そんな世の中にあって、情報とは情の報せ(しらせ)であり、情報のやり取りは、
実は人間としての情も含めたやり取りなのだ、とふと思ったことから、
そのあたりの想いを備忘の意味で記しておきたい。
 
以前、ある会合に誘われて参加することになった折に、知人が「SOGENさんも来るのなら、
書芸の真髄とは何か、教えてもらってくる。」といったことをSNSの共通の友人のコメント欄に
書き込んだのを、偶然目にしたことがあった。
で、会合の当日、案の定、その人から「書芸の真髄とは?」といったことを問われたので、
「まあ、あそびだね♪」と。
書芸の真髄を伝えるにやぶさかではないが、ちょっと聞いてくるといった程度に思っている人に、
知り合いとはいえ、そんなお宝情報を本気で伝える気にはなれない。
情報とはまさに情の報せであり、大切なことは深い情の交流無しには伝えることが出来ないし、
もし伝えたとしても、ちゃんと伝わらないことは目に見えているだろう。
 
また以前、ある大学の書道科の学生さんから、自分の卒論に必要なので、以下の項目について
回答してもらいたいといった内容のメールをオフィス宛てにいただいたことがあった。
それも決して失礼というわけではないが、あまりにも自分に必要な情報を
手っ取り早く得ようとしている感が否めないとのオフィスの判断で、返事を返させてもらった。
その後、その学生さんはお詫びとともに卒論にかける熱い想いを送り直してきてくれたが、
まさに人間同士として情報交換をするにあたって欲しいのは、その熱い情の部分なのだ。
 
これはまた私的な話になるが、昔、母を連れて、ある介護施設を見学させてもらった時のこと。
母が担当者から色々と質問を受けたのだが、まるで警察の取り調べでも受けているような気になり
壁壁したのを覚えている。
しかも母本人が居るのに、趣味は何かといったことまでムスコの自分に聞いてくるのだ。
向こうも仕事だから、必要な情報を早く得て処理したいだけで、けっして悪気があるわけでは
なかったのだろうが、お役所ならいざ知らず、介護施設で当人の気持ちも汲んでもらえず、
まるで無表情で尋問のような扱いを受ければ、安心して利用させてもらえる気にはなれないだろう。
 
必要な情報を機械的に集めるだけならロボットと同じで、人間がやる意味がない。
というか、それなら情が絡まない分、ロボットのほうがいいということになってしまう。
こうした場にかぎらず、最近、世の中の色々な場面で、まるで情に欠けたロボットのような
人間や対応に出会うことが増えているような気がするのだが、どうだろう。
人間がロボット化してしまえば、あらゆる能力においてロボットに到底敵うべくもなく、
人間が存在する意味も失われていってしまうのではないか。
 
そうならないためにも、機械任せの仕事はいざ知らず、人間同士の情報交換、情報伝達には
情が不可欠であり、そこに人間の価値や尊厳といったものがあることを、あらためて
心に留めていきたい。

 

 

作品NO.S-008 『遇-an-encounter』/2016 SOGENソウル展出品作品
 

 

SOGEN書芸塾主幹・書芸家SOGEN/平野壮弦公式サイト

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