書いたが、舞踏もいっしょ。
もちろんバレーやモダンダンスにもいいが、やはり
日本で生まれた歌舞伎や能、近現代のアングラ系の
舞踏のほうが日本人のアイデンティテーには
フィットするような気がする。
昔、アメリカの最新のモダンダンス集団の公演を見て、
ダンサーたちの鋼のような筋肉美と、その超人的な
肉体が繰り広げるパワフルな踊りに圧倒されたこと
があるが、自分の好みはやはり陰のある舞踏。
土方巽(ひじかた・たつみ)を祖とする山海塾や、
麿赤児率いる大駱駝艦などにそそられるところがある。
かつて60年代に、暗黒舞踏の創始者である土方巽が、
欧米で生まれたバレーは宙を舞い飛ぶが、日本は農耕民俗であり、地を這うように
大地とともに生きてきた・・・その日本人に合った舞踏があるはずだとして、
世界中が度胆を抜くような、日本発の新たな舞踏を生み出した。
暗黒舞踏の命名者は青島幸男、じゃなかった、三島由起雄だ。
言い得て妙・・・まさに暗黒の世界で蠢く人間の業や性情を表現するかのような土方の舞踏には
ピッタリだったんじゃないだろうか。
まるで地獄世界を表現するかのような、ある意味、狂人的な舞踏ゆえ、好みは分かれるだろう。
世の中、明るく楽しいものに惹かれる人のほうが多いだろうから・・・
けれども、その明るさや楽しさの対極にある悲哀や苦悩を秘めてこそ、すべてのものが
真に美しく輝くんじゃないか。
それは書も含めたすべてのアートに言えることのように思う。
書芸家 平野壮弦/ SOGEN
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